敵こそが最大の味方

フランスには HADOPI 法という不正ダウンロードを取り締まる法案があり、同じ名前の HADOPI という機関が不正行為者を取り締まっています。

映画産業、音楽産業の要請を受けてできたような組織ですが、ここが非常に面白い調査を発表しています。その内容を簡単に言うと「不正行為者ほど映画や音楽を享受するためにお金を払っている」ということです。つまり、不正行為者を取り締まるのは、最大の顧客を取り締まることに等しいことになる。(こちらの記事を御覧ください。)

このことはいろいろな人が体験的にそうじゃないかな、と思っていたことです。またこのブログでもお伝えしましたが、詳細の公表されていない調査によっても確認されている事実です。(公表されていないというのは、調査を依頼したり、執り行った映画会社や音楽会社が、その結果を見て自分にとって不都合であることを悟り、握りつぶしてしまったということです。)

それが今回、きちんとした数字と共に示されましたので、その意味でこの結果は興味深い。もっとも HADOPI の結果提示の仕方はちょっとややこしいので、Social Science Research Council の Joe Karaganis 氏がまとめなおした図をご紹介します。下の図です。

RvXCO.jpg

図の見方は難しくないと思います。左の縦棒から、「お金を全然払わない人」「月に1-19ユーロ使う人」「月に20-30ユーロ使う人」「月に30-99ユーロ使う人」「月に100ユーロ以上使う人」と並んでいます。そしてそれぞれの棒が濃い緑色と薄い緑色にわかれていますが、上の方の薄い部分は合法的な利用のみの人の割合を表し、下の方の濃い部分は不正行為者の割合を示しています。

いちばん右の「月に100ユーロ以上使う人」を見ると、不正ダウンロードをしている人は全体の八割くらいでしょうか。「月に31-99ユーロ使う人」を見ても不正ダウンロードをしている人は半分以上いますね。だから、こうした人々を取り締まるのは、音楽や映画にお金をたくさん使ってくれる上得意を取り締まるということになる。

不正ダウンロードをする人は「ただ乗り」、つまりフリーローダーであるとよく言われますが、それははっきり違います。捏造されたイメージです。彼らはそれが良いものであれば喜んでお金を出すのです。P2P からダウンロードするのは、いわば味見をするためのもので、それで「これはうまい」とわかれば、彼らはお金を払います。

P2P などを通してネット上に違法コピーが出まわることは、宣伝にもなる。

Adam Mansbach という人が Go the F--- to Sleep というとても面白い本を書いたのですが、この本は電子書籍として発売される前に pdf ファイルとしてネット上にながされてしまいました。ネット上に無料で出たから、本の売上は大したことなかっただろうと思いきや、実はベストセラーになってしまった。海賊版を見て、中身が良いとわかれば、みんな本体を買うのです。しかも海賊版が出ることでこの本の宣伝にもなった。そして作者も出版社もこの宣伝費用には一セントも使っていません。

ヴォーカロイド・ファンもおなじです。YouTube にアップロードされた動画を見て、これはすごいとミクの感謝祭のビデオに飛びついた。そしてヴォーカロイドのファンが世界中に広がった。逆にああいう(違法な)動画が出なければ、消費者はヴォーカロイドの魅力どころか、その存在すら知ることはなかったでしょうね。

ネット上のマーケティングはまだぜんぜんよくわかっていないのです。どこをどう押せば、どういう結果が出るかなんてことは、知っている人は誰もいない。逆にだからこそネット上には可能性があるのであり、いろいろな実験を試みなければならないのです。

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