報道されない investor-state cases

TPP には一国の政策が他国の企業の利益を疎外する場合、企業がその国を訴えることが出来るという条項があります。これがどれだけとんでもない条項であるのか、実例を示しましょう。

ガソリンにはかつて MMT という物質が付加されていました。オクタン価をあげるために付加されていたのですが、アメリカの環境保護庁は MMT は健康被害をもたらす可能性があるとして1977年に使用を禁止にしたのです。それを受けてヨーロッパも禁止しました。しかしカナダではずっと使われていました。

MMT を作っていた米国の Ethyl という会社は健康被害なんてとんでもないと言い張ったようですが、その主張は専門家からは一顧だにされなかった。

そしてカナダも健康への配慮から1995年に MMT の輸入を禁止する法律を作りました。

この時です、Ethyl がカナダ政府を訴えたのは。この訴訟が可能になったのはカナダが NAFTA に調印していたからです。NAFTA においても TPP と同じように、企業が政府を訴えることができるのです。このときカナダ政府はどうしたかというと、しちめんどくさい法廷闘争をするかわりに、二億ドルという示談金を Ethyl に支払い、謝罪の手紙を書き、MMT の使用を禁止した法律を撤回してしまったのです。というわけで有害物質はいまでもカナダでは使われています。

これが investor-state enforcement です。その問題点はもう明らかでしょう。健康を守るという一国の意志、一国の国民の意志が、企業の利益のためにつぶされてしまうということです。先月末にもアメリカのタバコ会社フィリップ・モリスが、オーストラリアを訴えると発表しました。オーストラリアはタバコの健康被害を考え、タバコの簡易包装を法律で定めようとしていたからです。(こちらの記事を御覧ください。)

investor-state cases はすでにいくつも起きていて、大変な問題になっています。(興味のある方は、PublicCitizen のこちらのページから、Table of Foreign Investor-State Cases and Claims Under NAFTA-STYLE Deals という PDF ファイルをダウンロードして下さい。)しかし日本のマスコミはまったくこのことを報じようとしない。すべては農業と関税の問題であるといった記事の書き方をしています。彼らは勉強不足なのでしょうか、それとも何か隠れた利害があって、報道を控えているのでしょうか。

Post a comment

Only the blog author may view the comment.

Profile

tkaoru

Author:tkaoru
Welcome to FC2!

Latest journals
Latest comments
Latest trackbacks
Monthly archive
Category
Search form
Display RSS link.
Link
Friend request form

Want to be friends with this user.