第20回コンピュータ将棋選手権

第20回コンピュータ将棋選手権が二日から四日まで電気通信大学で行われました。「人間にに追いつけ、追い越せ」と、各ソフトが年々実力をあげている様子は実に興味深いし、今年は特色のある手法を用いるソフトが活躍し非常に愉快でもありました。たとえば、稲庭将棋はひたすら自陣に引きこもって相手が考慮時間を使い尽くし時間切れ負けになるのを目指した。そのため異常な長手数将棋となり、千日手で勝負がつかないこともあったけれど、一次予選は負けなしで三位通過。初出場にしては立派な成績です。さすがに二次予選では24ソフト中23位とふるいませんでしたが、しかしそこであげた唯一の勝ちは、なんと準優勝ソフト習甦からのもの。習甦は一筋から九筋まで位を取り、完璧な攻撃態勢を築いたのに、それからあとどう攻めて行けばいいのか分からず、時間切れ負けになっています。稲庭将棋に対しては、攻め駒を集中させ一点突破を目指せばいい。歩を突いてこないから、理想的な攻撃態勢を作るのは容易なのだけれど、やはりコンピュータ将棋はまだ構想を練るということができないのでしょう。稲庭将棋に勝ったソフトも、くるっと丸まったハリネズミを相手にするライオンのように、もたもたしています。稲庭将棋はいわゆる「ネタ」のようなソフトだけれど、非常にいい問題提起をしたと思います。

また昨年の優勝ソフトGPSはコンピュータを三百台だか四百台使い計算をさせた。ほとんど反則的な手法ですが、しかし決勝の順位は結局三位でした。専門的なことはわからないが、手の可能性を探る作業は使用するコンピュータが多ければいいというものではないらしい。いや、多いほうがいいのかもしれないけれど、その使い方に工夫がなければ無駄になるということなのでしょう。そのことが分かっただけでもこのGPSという実験は意義があった。

それにしても今年のソフトは、ひょろりとした新人レスラーが筋肉をつけ始めたときのような迫力を持っている。その腕っぷしは、まだ小橋健太ほどの太さはないけれど、しかしはっきりとうなりをあげはじめた。たしかにとんちんかんなこともたまにやらかすが、これだけ体力があると、そのとんちんかんをとがめてから勝ちに導くのは容易なことではありません。

来年はぜひとも強豪棚瀬将棋やKCC将棋もこの大会に参加してほしい。わたしはひそかにこの二つこそ現在最強の将棋ソフトではないかと思っていますから。

[おまけ]

大会を見ていて感心する手がいくつもありました。YSS(先手)対芝浦将棋の終盤もそのひとつで、図は後手が4四香と打ったところ。

05

先手は1二歩成とすれば後手玉に必死をかけることが出来ます。ところが今のままでは4六香以下詰まされてしまう。そこで先手が小技を使いました。
▲4一成桂
△同玉
▲3三桂不成
△同角
▲4二歩
△3一玉
▲1二歩成(下図)

06


王手の連続で1五にいる後手の角をひっこめさせ、詰みをなくしてから、余裕で必死をかける。こんな手順を一秒で読んでしまうのだからコンピュータ将棋にはかないません。

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