世界コンピュータ将棋選手権

2008年 5 月に行われた世界コンピュータ将棋選手権で、激指(選手権優勝)と棚瀬将棋(準優勝)というコンピュータソフトがアマチュアトップの二人を破ったときは衝撃が走りました。

今年も選手権まであと二週間。

主催者が報道機関向けにだしたパンフレットを見ると、コンピュータとアマチュアトップとの対戦は、2008年以降、上記の二試合を含めて九試合あったようです。勝負はコンピュータの五勝四敗。そのうち一局は勝ちを読みきっていたのにバグのため投了という、コンピュータらしい負けだそうです。ですので実質六勝三敗といってもいい。

さらに、このブログにも書いたけれど、今月はじめに行われたオープン戦では、GPSや優勝した無名ソフトが元奨励会三段をやぶっています。もうプロにも挑戦できるレベルに達したといっていいでしょう。コンピュータ対トッププロの闘い。今から胸がわくわくする。

主催者が出したパンフレットを読んで、そうだったのか、と感心した部分があります。それは2009年に革命的な将棋ソフト Bonanza のソースコードが公開されたということです。

 2009年 1 月、 Bonanza の作者の保木邦仁さんがソースコードを公開し、コンピュータ将棋界で大きな話題となりました。

 また、5 月のコンピュータ将棋選手権では、数年前よりソースコードを公開していたGPS 将棋が躍進し初優勝し、その後そのバージョンが公開されました。

 これにより、全世界のプログラマがその技法を学んで自分のプログラムをステップアップさせたり、既存のソフトに新たなアイディアを付け加えて発展させたりすることが可能となりました。その結果、これまで将棋プログラムを開発してきたプログラマの技術向上はもちろんのこと、他分野で実績のあるプログラマの新規参入もみられ、コンピュータ将棋の実力の底上げが進んでいます。


いつだったか、Bonanza が他のソフトに負けたとき、保木さんが「ソースコードを公開すべきじゃなかった」と冗談半分に嘆いていたけれど、このことを言っていたのか。しかし情報の公開により全体のレベルがアップしたのだからこれはよいことだったと思います。情報を一部の人間が独占し、それによって己の利益を図る。資本主義の世界でそれは合理的な行為ではあるけれど、しかしそればかりではつまらない。知をパブリックドメイン化することで全体のレベルを一挙に、短期間で、底上げすることができるなら、それはすばらしいことではありませんか。近視眼的な見方をすれば、なるほど公開者はそれによって利益を失うかもしれない。しかしそれによって恩恵を受けた人々(この場合、プログラマーの方だけではなく、わたしのようなただのコンピュータ将棋ファンを含める)からかけがいのない尊敬と支持を受けることになるのです。

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