新しい評価のシステム

自己出版によってだれでも出版社を通さず自分の本が出せる(自己表現できる)ようになりました。

しかしこの大量のインディー系作家の作品には、もちろん良いものもあるけれど、不出来なものも相当にある。(綴りのまちがい、文法のあやまち、ぞろっぺえな文章……)

自己出版が伝統的な出版社による出版に取って代わるには、インディー系の作品からよいものを評価、抽出していく仕組みを構築しなければなりません。良いものは淘汰の結果として自然に残るものだ、という考えもあるでしょうが、しかしそれではあまりにも頼りない。せっかく自己出版というよい仕組みを作ったのだから、それを評価するシステムも良いものを作りたい。

最近の動向を見ると、同じようなことを考えている人はかなりいるらしい。たとえばインディー系作家の作品を評価するブログが続出しています。著名な作家、出版関係者も自己出版に興味を示すようになった。編集者の Rich Adin は良質の作家を見つけるとブログでときどき宣伝しているし、作家の Richard Herley (日本ではほとんど知られていないけれど Penal Colony という傑作を書いています)は Richard Herley's Ebook Filter というインディー系の作家を評価する専用ブログを立ち上げました。MobileRead.com では毎月一冊本を決めてみんなで読むという読書会をフォーラムで開いているけれど、来月はたぶん MR のメンバーでもあるインディー系の作家の作品が選ばれそうです。

インディー系というと伝統的出版社に見向きもされなかったから自己出版するのだろうと思われていましたが、どうやらアメリカはそういう偏見から抜け出すために、すでに一歩を踏み出したらしい。

Amy Edelman の Why is Indie OK for Musicians and Filmmakers...But Not for Writers? http://publishingperspectives.com/2010/09/why-is-indie-ok-for-musicians-and-filmmakers-but-not-for-writers/という記事は、わたしのこの印象を再確認させてくれるものでした。

映画なら「ハート・ロッカー」、音楽ならザ・シンズみたいなバンドが、インディー系であるにもかかわらず、賞賛を博しています。インディー系の作家も同じように扱われていい、というのが Amy さんの考え方。

だいたいトルストイの「戦争と平和」、 Robert Kiyosaki の Rich Dad, Poor Dad 、「かもめのジョナサン」、「風と共に去りぬ」、「キャリー」、「ハリー・ポッター」…これらはみんな最初、伝統的な出版社から出版を拒否されているのです。

インディー系だから質が劣る、と考えるのは近視眼的なアホだ。そう考えて Amy さんは去年 IndieReader を設立しました。

このサイトはちょっと有名ですね。というのは Lisa Genova の Still Alice (「静かなアリス」)という本を出したところだから。Lisa さんはアルツハイマーをテーマに本を書いたのですが、エージェントを見つけることができなかった。アルツハイマーの話なんて読む人がいないというのが拒絶された理由でした。そこで彼女は IndieReader から自己出版することにしたのですが、なんとそれがニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリストに載り、とうとう大手出版社と契約を結ぶに至ったのです。

この話を聞けば、ああ、Amy Edelman てあのサイトの創設者かと思い当たる人がいるかも知れませんね。

ただ、最初に言ったように、自己出版には大きな問題がある。膨大な数の作品からどうやってよいものを見つけ出すのか。自己出版が新しい文化として機能するためには、そのシステムを構築していかなければなりません。

Amy さんは一つの方法を考え、このほど IndieReader Select というサービスを立ち上げました。

仕組みはというと、まず作家に IndieReader Select 用の自信作を送ってもらいます。その際作家は149ドルをレビュー料金、そしてデータベース化料金として支払います。もちろんレビューの結果、IndieReader Select に入れる水準に達していないと判断されればレビュー料の25ドル以外は全額返却されます。

そして IndieReader Select に登録された作品は全国のインディー系の本屋に優良作品として届けられる。こういう形で良い本を宣伝していこう、と Amy さんは考えたわけです。

これは非常に良心的なシステムですね。基準に達していない作品の場合はお金が返ってくるのだから。こういう仕組みがこれからもっとたくさんできてくることを期待します。
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