オーディオブック

Australian Radio の Final Draft という番組でオーディオブックの話題が取上げられました。この三十分番組は LibriVox のホームページで聞くことが出来ます。

取上げられている話題は三つ。

1.ボランティアが朗読を録音し無料公開している LibriVox の紹介。
2.Nick Cave が自作 The Death of Bunny Munro を朗読したオーディオブックについて。
3.コンピュータによる文字の音声化が点字文化を脅かしているというオーストラリア点字協会会長の意見。

わたしが面白いと思ったのは2. に関して二人の進行役がもらした感想です。Nick Cave のオーディオブックには彼自身のバンドが演奏した音楽が挿入されているのですが、その音楽のせいで物語が「さらに悲しい、深刻な」感じを与える、と一人はしゃべっています。わたしは小説がマルチメディア化する、いや、従来の紙の本のほかに、マルチメディアを利用した電子ブックが一つのジャンルを形成すると思っています。Nick Cave のような音楽家が小説を書けば、それに音楽を添えてみたいと考えるのは当然でしょうし、映像作家が小説を書けば、静止画像や動画を文字テキストを組み合わせてみたいと考えるのは当然でしょう。こうしたメディアがどのように発展していくのか、わたしには非常に興味深い。

また二人の司会者はオーディオブックの欠点についてもちらりと触れています。つまり、オーディオブックは文章の途中で止めることが出来ない。これはわたしも常々考えることです。本を読んでいて、とりわけ良質の文学を読んでいるときは、いろいろなことが頭の中に浮かんできます。浮かんだことはそのまま忘れ去られることも多いけれども、ふと読むのをやめて考えにふけることもある。ところがオーディオブックの場合は、こちらの思いに関係なく、どんどん先へ進んでいってしまう。これはずいぶん不都合なことだと思います。文章を読み返したくてもなかなかできないし。そこで司会者たちはオーディオブックは文学的な作品よりも、筋を追うだけの作品により向いているのではないか、などと感想を漏らしている。

逆に言えば、読書体験というのは、単に文字を読むということではない、ということでしょうね。本に触発されて過去を振り返り、現在を反省し、将来に思いをいたす。あるいは文章を二度も三度も読み返したり、書き込みをしたり、友人とその本について議論する。そうしたことすべてが読書体験に含まれているのでしょう。読書というのは、その過程における道草も含めて、読書というのではないか。そのことを考え、知るためにもオーディオブックは一度聞いてみる価値があると思います。
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