Eerie by Blake & Jordan Clouch

Clouch 兄弟の新作 Eerie の書評を頼まれたので、約束を果しておこう。

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1980年の秋、七歳の Grant Moreton と五歳の妹 Paige は父親の運転する車に乗っている最中、事故に遭ったが、奇跡的に命を取り留めた。

それから三十年後、Grant はシアトルの刑事になり、妹とは長いこと音信不通の状態だった。しかしある事件をきっかけに、妹が高級娼婦をしていて、その顧客が次々と行方不明になっていることを知る。

Grant はある晩、妹の家を訪ね、憔悴しきった彼女の姿に驚く。彼女の話によると、その家には幽霊のような何かがいて、それが彼女に取り憑き、彼女を憔悴させているのだという。「それ」は彼女のベッドの下に住みついていて、彼女が家を離れようとすると、とてつもない肉体的苦痛を与えるのだ、ともいう。Grant はもしかすると妹は薬物中毒で幻覚を見ているのかも知れないと考える。そして友人の医者を呼び、彼女を病院に連れて行こうとする。

ところが彼女に幽霊などいないことを証明しようとして、彼女の寝室に入って行った友人の医者は、うつろな目で Grant を見つめながら「おまえは何もわかっていない」と言い、鏡の破片で自分の喉をかききって自殺してしまうのだ。

いったい友人の医者に何が起きたのか。そして Paige の家には何が居るのか。呪われた家に閉ざされた二人の兄妹はどうなるのか。家の中という閉ざされた空間で展開されるホラーは「意外なくらい」面白かった。

「意外なくらい」というのは、作者の一人、Jordan Crouch はこの作品がデビュー作になるからである。兄の Blake はもう何冊も小説を発表しているから、おそらく弟の文章には彼の朱筆が加えられたのだろう。それでもこれだけ面白く書けているのだからたいしたのものだ。文章にスタイルといえるようなものがなく、どうやらスタイルに対する感覚もいまだ鈍感であるらしいことは残念だ。しかし一応達意の文章になっていることは評価したいと思う。

読みながら、その文体に不満を感じはしたものの、しかしこの小説は、英語を学習する人間にはうってつけの reading material だなと思った。英語は平明で、現代的な言い回しがどっさり使われているからである。ペーパーバックを読みあさっている中学生や高校生にはお勧めの一冊だ。

本日アマゾンがから発売である。

個人情報を守れ!グーグル対策

Google のプライバシー・ポリシーが三月一日から変更になります。今までは別々に扱われていた顧客のデータや情報を一括管理するというのです。つまり個人情報、たとえばグーグル・メールの情報、グーグルの検索エンジンの使用の履歴、YouTube で見た動画の履歴、いろいろなネット利用の情報がすべて「あなた」の名前の元に一元的に集約されるのです。

え、どういうことかわからない? うう~ん、つまりですね、あなたが毎晩どんなエロ動画を見ているかとか、どんなエロワードで検索をしているかとか、要するに、あなたがどんな「性」癖を持っているかと言うことを Google は全部知ってしまうと言うことです。困るでしょう?

しかし Google は便利だから使わないわけにもいかない。というわけでグーグル対策のヒント一つと、一般的にネット上で個人情報を守るために役立つヒントを六つほどご紹介します。ソースはわれら消費者の味方 Electronic Frontier Foundation です。(こちらこちらの記事を参照のこと。)


Google のアカウントを持っている方は、アカウントを使ってサイン・インしてください。メールのアカウントでも何でもいいです。

サイン・インしたらブラウザーのアドレスバーに http://www.google.com/history と入力して移動してください。なんとあなたが最近訪れたウエッブサイトの記録があらわれます。

それをですね、remove all Web History という上の方のボタンをクリックして消してしまうのです。

「消しますか」とか訊いてくるので、OK を押しちゃってください。

そうすると、履歴が消えるだけでなく、Web History の機能も止るのです。個人情報を守りたいなら、このままにしておいてください。上の方に Resume ってボタンがあるけど、これを押すとまた履歴を取られてしまいますので、御注意。

以上が Google 対策。で、これから挙げる六つのヒントは、個人情報を守るための一般的に有効な智恵です。


自分の名前や住所を検索にかけたことってありませんか。あれは絶対止めた方が好い。あなたの正体をさらすようなものだから。クレジットカードの番号とか、検索しちゃいけませんよ。ヤフーとかAOL とかもGoogleとおなじで、膨大な顧客情報を収集しているんだから。


あなたが加入している ISP の検索エンジンは使ってはいけません。AOL に加入しているなら AOL のサーチエンジンを使うのは避けるということ。ISP はあなたが誰か知っていますからね、検索内容とあなたを結びつけるのはいとも簡単。


Google とか MSN とかアカウントを作ってログインさせることがありますね。Google だったら Google Mail と Google Chat とかを使うときはログインするし、MSN ならホットメールとかメッセンジャーを使うときにログインする。ログインした状態で検索エンジンを使うと、その履歴とあなたを結びつけるのは簡単です。だからGmailを使ってログインしたまま Google の検索を利用するのは危険です。

面倒臭いけど、二つのブラウザーを使って、Gmail は IE で、Google の検索は Firefox で、と分けるやり方もあります。


検索エンジンのクッキーもブロックしましょう。クッキーはできることなら全部ブロックしたいんだけど、そうなると利便性が損なわれるから、ブラウザーを閉じたらクッキーもなくなるという設定にして我慢するしかない。IE をお使いなら、
(1)ツールメニューからインターネット・オプションを選ぶ
(2)プライバシーのタブをクリック、詳細設定を選択。
(3)「自動 Cookie 処理を上書きする」にチェックを入れる。
(4)ファースト・パーティの Cookie「ブロックする」にチェック。
(5)サード・パーティの Cookie「ブロックする」にチェック。
(6)「常にセッション Cookie を許可する」にチェック。
こうやっておいて、一日に一回はブラウザーを閉じるようにしましょう。するとクッキーも消えてくれます。

上の記事には Firefox の設定の仕方も書いてあるんだけど、うまくいかなかった。ただしわたしがよく使う検索エンジンはすべてクッキーをブロックするようには設定しておきました。


IPアドレスを変えましょう。ダイナミックIPアドレスをお持ちの方はモデムを一日切ってしまうんですね。すると IP アドレスが変わる。

しかしスタティック IP アドレスの場合はモデムを一週間切っていても変わりません。そこで……


Tor のような匿名化ソフトを使ったり、Privoxy とか、Anonymizer などのサービスを利用しましょう。これは上級クラスのヒントで、わたしはこの三つのソフトやサービスを使ったことがないので、記事に書いてあることをそのまま書いただけです。しかし Tor あたりは、ウエッブサイトを見て、導入してみようかなと考えているところです。

一企業が世界じゅうの人の個人情報を握るというのは怖ろしい事です。さらにアメリカ政府が法制化したら、Google の情報はアメリカ政府にも渡ることになります。とんでもない話だ。

去年から今年の一月にかけて、わたしは SOPA 反対のため、集会に出て演説もしたけど、今度はGoogle ですからね。まったく大企業というのはこっちに休む暇もあたえず攻撃を仕掛けてくる。

Konrath と Crouch の新作!

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ミステリ作家の J. A. Konrath 氏から宣伝用に新作 Stirred の書評を書いてほしいと一カ月くらいまえに頼まれました。ちょっと時間がたってしまったけれど、約束だから書きましょう。

まずなぜ書評を書くのに時間がかかったかということを言い訳しておきますと……

決して読むのをなまけていたわけじゃないんです。出版前の原稿をもらってからすぐに読み出したんですから。ただこの作品はわたしの苦手なタイプの本だったのです。映画で言うと「ソウ」に似ている。そして「ソウ」はわたしは見るのがイヤな映画なんですねえ。ゾンビものは大好きなんですが……。それで380ページのうち、最後の100ページ、おそらくもっとも「ソウ」的な内容が展開されているであろうクライマックスの部分がどうしても読めなくて困っていたのです。しかし、原稿を受け取ってから一カ月もたってしまったし、しょうがないから最後の部分は読まずに、書評を書くことにしました。逆に「ソウ」がお好きな方は、この本は絶対楽しめると思いますよ。ハイ。

Konrath 氏から書評の依頼があったのは一年前の Draculas 発刊以来です。あれは共作でしたが、今回も Blake Crouch との共作。この作品の目玉は、Konrath の生み出したヒロイン、ジャック・ダニエルスと、Crouch の生み出した最悪の殺人鬼ルーサー・キングがガチでぶつかるという設定になっていることでしょう。

ジャック・ダニエルスは(この作品では)シカゴ警察のもと警部です。女だからといって見くびっちゃいけない。数々の凶悪犯とたたかってきた敏腕警部です。英語には「天使も入るを恐れるところ」という言い方がありますが、これは「ジャック・ダニエルスも…」と書き換えるべきでしょうね。それくらい彼女は勇猛果敢、マッチョな男を越えたマッチョな女です。本編では妊娠して腹ボテ状態なのに、殺人鬼にむかって毒ガス渦巻くなかを突っ走る。

一方ルーサー・キングはいわゆるサイコです。変質者で、でも妙に知能指数が高そうな、残酷無比の殺人者です。パズル仕立ての連続殺人を仕組んだりして、本当に「ソウ」のあの殺人鬼とよく似ています。

共作者それぞれが大切に育ててきたキャラクターが激突し、さらにどちらのキャラクターもこの作品を最後に姿を消すのですから、作者たちは面白いものを書こうと必死になっています。恐怖シーンあり、お笑いあり、ちょっとしたロマンスあり、派手なアクションあり、とにかく読者を楽しませようとする意気込みが非常によく伝わってきます。

章立ては短く、場面や視点が次々と変わり、決して飽きがきません。しかも描写には映画的なグラフィックさがあります。わたしみたいな心臓の弱い人間には読むのがつらくなるようなグラフィックさが……。

no more public domain day...in Japan

ずいぶん以前にわたしが青空文庫のフォーラムにパブリック・ドメイン・デイのことを書いたら、青空文庫の人がやたらと感激して、さっそく一月一日をお祝いするようになりました。その年にパブリック・ドメイン入りした著作を集めて一月一日に公開していますよね。あれです。世界中でパブリック・ドメイン・デイをお祝いする行事が行われているのに、日本だけ何もしていないのはおかしいと思ってわたしが投稿した文章がきっかけとなり、青空文庫もようやくひとつ世界レベルに追い着いた。いいことです。

しかしAPの報道によると野田総理はTPP交渉に参加する意向を示したとのこと。TPPに入れば日本の著作権保護期間は七十年か「それ以上」に延長されますから、TPPが締結してからおそらく四年以内に青空文庫はパブリック・ドメイン・デイを祝えなくなるはずです。それが二十年「以上」つづくのですよ。

そういう重大なニュースだということが、日本の人にはわかっているんでしょうか。

アメリカの著作権法はミッキー・マウス法とも称されるように、業界の利益のために著作権の権利期間がどんどん延長されてきました。もしもアメリカの著作権保護期間がふたたび延びることがあれば、TPP参加国もそれに歩調をあわせなければならなくなるでしょう。そうしなければISD条項を使って、アメリカの企業が国家を訴えてくる。御存知のようにこの訴えを処理する国際投資紛争解決センター(ICSID)はアメリカ寄りの組織ですから、アメリカの企業ははじめから有利な立場に立っています。しかもアメリカは知財に関してはすさまじいほど強硬な姿勢を取っている。この訴えを退けることは不可能と考えるべきでしょう。いや、日本の政治家や官僚などは、アメリカの企業が睨みを利かしただけでふるえあがり、彼らの意に沿うように政策を取り上げたり、取りやめたりするでしょう。日本の官僚はACTA交渉でアメリカの提案に目を輝かせて聞き入っていたから、ふるえあがるどころか、驚喜するかな。

しかし今後日本が国民の健康や、生活の利便をはかるための法制度を作ろうとしても、まず、それがTPPのもとで可能かどうかを考えなければならない、つまりアメリカの企業の利益に抵触しないか考えなければならないようになるでしょう。そして抵触する場合は、国民の安全、健康、利便を犠牲にしなければならないことになるのです。これはカナダやオーストラリアですでに現実に起きていることです。

著作権の保護期間が延びるだけでなく、一般消費者が作品を使う使い方にもいろいろ問題が出て来ます。なぜなら知財保護のためにアメリカはきびしい規制を求めてくるからです。たとえばDRMのかかっているDVDを個人利用のためにリッピングすることは禁止されます。今まで私的に使うためのコピーであれば許されていたものが、犯罪行為と見なされるようになる。この法案はすでに日本で議論されているらしいから、TPPに入れば、必ず実現するでしょうね。

また、アメリカの企業、あるいは企業にやとわれた法律事務所が違法ダウンロードを理由に大勢の一般の日本人に対して訴訟をおこすでしょう。これももうアメリカではすでに起きていることです。お店で音楽CDを万引きすれば罰金が科せられますが、違法ダウンロードに対してはそれの何倍、何十倍の賠償金が請求されます。

こうしたことに関してはアメリカの Protect-IP とかミレニアム法を調べて見て下さい。いやになるようなことが山ほど書かれている。しかももっといやになるのは、それらが確実に日本の将来の現実だということです。TPPにはこうしたことがセットでつけられているのです。

ヴォーカロイドのファンとしても気がかりなことがあります。ヴォーカロイドはいまでこそCGMとして消費者が曲や歌詞や動画を自由に作る権利を持っていますが、TPPに加入した場合は、はたしてそんな自由がいつまでつづくのか。二次創作が不可能になる可能性は充分にある。

TPPに入れば著作権保護期間は70年に

アメリカに来てひと月以上たち、日本のことなんかどうでもよくなってきたんだけれど(実際、運転免許を取ることのほうが今のわたしにとっては大切である)、メールで日本が TPP 交渉参加に前のめりだと聞いたから書いておきましょう。

日本が TPP に参加すれば著作権保護期間は確実に70年かそれ以上に延長されます。今年の六月でしたか、韓国が50年の保護期間を法的に70年に延長しましたね。あれは EU と FTA を結んだ結果です。FTA も TPP も、関税やら不公平な法律規制をできるだけなくそうという国際的な約束です。EU は著作権の保護期間が70年なのに、韓国だけ50年では、韓国の出版業界だけが得してしまうでしょう? だから保護期間を合わせたわけです。日本が TPP に参加すればおなじことが起きます。これは確実。TPP の交渉に参加している国の著作権保護期間を調べてみてください。アメリカを含めほとんどが70年です。これらの国と平等な取引をしようとするなら、日本は韓国のように著作権保護期間を延長しなければなりません。たしか TPP を批判しているニュージーランドの大学教授ケルシーさんも日本での講演でそのことを指摘していました。

アメリカ産業界が TPP の交渉にあたってアメリカ政府に提出した要望書がありますが、それにも他国の著作権の保護期間を70年以上にしろと書いてある。

こうした点から見て交渉参加国から保護期間を延長しろと要求されるのは当然の成り行きです。さらに民主党というのは今までの党首=総理、つまり鳩山と菅が著作権保護期間の延長論者だった。いや、日本にはもともと著作権に対して意識の高い政治家はひとりもいません。著作権を問題にしても選挙で票になりませんからね。逆に言えば有権者も著作権に対する意識が低い。ヨーロッパでは海賊党が評判になっていますが、あれはヨーロッパでは著作権が大きな政治的イシューであることを示している。カナダでも著作権に関しては与党と野党が対立していますし、学生運動も存在しています。アメリカだって政府こそ映画や音楽産業の側に立つけれど、国民のなかにはそうした態度に根強い批判があり、パブリックドメインを保護したり、クリエイティブ・コモンズのような仕組みを創り上げる勢力が存在するのです。日本にはそんなものは皆無です。皆無だから TPP 加入なんてきいても、反対運動すらおこさない。

青空文庫は壊滅まであと一歩です。よくはしらないけれど、たぶん本の数が三分の一くらいに減るんじゃないですか。保護期間70年が実現すれば、アメリカの Project Gutenberg のほうが日本の書籍をたくさん収めることができるようになります。アメリカのパブリック・ドメインの規定は日本のそれよりも広いからです。つまり1923年以前に出版された本は、著者の死亡年月日にかかわらず、著作権が切れたものとみなす、という古い規定が生きている。また、いま行われようとしている裁判の結果によっては、パブリックドメインの領域はさらに広がるかも知れない。アメリカは TPP に参加するとしても、他国に合わせて自分たちの権利を縮小するような真似は絶対しません。他国に対して自分たちよりももっときびしい知財の枠組みを要求する、それがアメリカが TPP に参加する目的なのです。

日本人も日本の政治家も、また、日本のメディアも、ACTA 交渉以来アメリカが何を目論んできたかちっとも知らない。外から見ると日本というのはあきれた国ですね。何も知らない。世界という舞台で意見も言えない。権利も主張できない。自閉症に陥った子供みたいなもので、だからアメリカが監督してやらなければならない。これはわたしの意見というより、アメリカの普通の人々の意見ですよ。
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